コラム

2021.05.30

同時廃止事件か管財事件か・その3

京都地方裁判所で(少額)管財事件として扱われる基準の1つとして、「個別の財産(同種のものが数口ある場合には、それらを合算した金額を基準とする。)が20万円以上の場合。」を挙げました。

前回に、個別の財産とは何かを取り上げましたが、この内、今回は「退職金」について取り上げます。

京都地方裁判所の場合、退職が間近という事情がない場合は、仮に現在、退職した場合の退職金の金額を算出し、その金額の8分の1が20万円以上の場合は、(少額)管財事件として自己破産の申立てをします。なぜ、仮に現在退職した場合の退職金の8分の1という運用になっているのでしょうか。

法律上、退職金債権の4分の3は、差押禁止債権となっており、4分の1のみが差押可能となっていますが、さらに退職が間近という事情がなければ、仮に現在退職した場合に算出した退職金額が実際に受け取れるかどうか不確かであることから,さらに2分の1をかけた8分の1になっていると言えます。

京都地方裁判所では、自己破産申立人の勤務先について勤続5年以上の場合は、退職金(見込額)証明書が申立て時の必要書類として提出が求められています。もっとも、勤務先に「自己破産申立てをするので証明書を出して下さい。」とは言いにくい場合が多いのではないでしょうか。そのような場合を含めて、証明書の収集が困難な場合は、代わりに退職金支給規程と退職金計算書を提出することになっています。