コラム

2024.08.18

給与差押えと自己破産

 借金問題でご相談に来られる方の中には,債権者に給与の差押え(強制執行の一つ)をされたことをきっかけに,自己破産申立てを決意され,自己破産申立て続きをご依頼される方がおられます。

 受任後,債権者に自己破産申立て手続きの受任通知を出しますが,それだけでは,法律上,給与の差押え手続きを止めることはできません。

 破産法42条1項には,破産手続開始決定があった場合には,強制執行等ができなくなる旨規定されており,同条2項には,破産手続開始決定前に既に強制執行がなされているものについて,破産手続開始決定後は失効する旨規定されています。もっとも,担保不動産競売等はこれに当てはまりませんし,破産手続開始決定時に既になされている国税滞納処分は続行されます。

 そこで,給与の差押えがなされてから自己破産申立て手続きを受任した場合(受任通知を出す際に債権者に給与の差押え手続きの取下げを要請しますが,要請通りに取り下げられることはないと考えた方がよいでしょう。),できるだけ速やかに自己破産申立てをしなければなりません。

 同時廃止事件としての自己破産申立てをした場合(申立人を「Aさん」とします。)を例にしますと,申立て後に,破産手続開始決定が出た場合,速やかに,給与の差押え手続きの執行裁判所に「強制執行停止」の上申書を提出します。その後,給与の差押え手続きは「停止」されますが,給与からの天引きは続き,Aさんの勤務先はAさんにも天引き分を支払うことなく,勤務先でプールすることになります。その後,免責決定が確定した段階で,執行裁判所に今度は「強制執行失効」の上申書を提出します。

 ここでようやく給与の差押え手続きは失効し,勤務先のプール金もAさんに支払われることになります。