コラム

2025.11.09

管財事件の引継予納金のお話

破産事件には,同時廃止事件と(破産管財人が選任される)管財事件がありますが,京都地方裁判所の場合,少額管財事件では,破産管財人に予納金として20万5000円を引き継ぐ必要があります。

最近,私が代理人となって大阪地方裁判所に2件の破産申立てをしたのですが(いずれも管財事件),当初,引継予納金は京都地方裁判所と同様に20万5000円であろうと考えていました。ところが,大阪地方裁判所から,引継予納金として21万6000円が必要であると連絡あり,不思議に思いました。その理由を担当書記官に尋ねると,「20万5000円に破産管財人口座開設手数料相当額の1万1000円を上乗せしている」との説明を受けました。

破産管財人は,破産手続開始決定後に,破産管財人口座(高価品保管口座)を銀行に開設する必要があるのですが,2023年以前では,口座開設手数料は無料でした。ところが,2023年に入り,1万1000円~1万6500円程度の口座開設手数料を導入する銀行が相次いでいます。

それ以降も,京都地方裁判所では,引継予納金に破産管財人口座開設手数料相当額を上乗せすることはなく,引継予納金は20万5000円のままです。したがって,破産管財人が破産管財人口座を開設する際は,引継予納金の金額は従来と変わらないのに(破産財団から支弁する)破産手続費用の金額が従来よりも大きくなる結果を招いていました。

ところが,大阪地方裁判所では,これまでの20万5000円の引継予納金に破産管財人口座開設手数料相当額として1万1000円を上乗せし,引継予納金を21万6000円とする扱いを始めているようです。

今後,京都地方裁判所でも,大阪地方裁判所と同様の扱いを始めるのではないかと個人的に予想しています。

2025.08.17

免責審尋について

 破産手続きの中で,裁判官が免責するか否かを判断するために「免責審尋」が行われることがあります。

 新型コロナウイルス流行前には,私が申立代理人となった京都地方裁判所への同時廃止申立事件の一部では,免責審尋が行われることがありました。破産者本人と申立代理人弁護士が裁判所に出頭し,裁判官から,破産申立書に記載したことを基に,浪費などの免責不許可事由を含む,破産に至った事情などに関して尋ねられます。

 しかし,新型コロナウイルス流行後,おそらく感染防止の観点から,免責審尋が行われなくなりました。新型コロナウイルス流行が収束してからも,今のところ,私が受任した京都地方裁判所への破産申立事件に関して言いますと,免責審尋は行われていません。もっとも,同時廃止決定後に,裁判所から,引き続きの家計収支表の提出や,浪費等に関する反省文の提出を求められることはあります。

 なお,大阪地方裁判所では,10名程度の破産者が会議室に一斉に集められ、裁判官から破産者一人一人に順番に,免責制度等に関する一般的な質問がなされる形式の集団免責審尋が実施される場合があります。私も,今まで,破産者代理人として数回,出頭したことがあります。

2025.07.06

法人と代表者個人の破産申立て

当事務所では,個人と,その個人が経営する小規模の会社(法人)の破産申立てを扱うことも多くなりました。

 法人が経営不振により破産申し立てをするような場合,法人の代表者個人は法人の債務の連帯保証人になっていることが多いため,通常,代表者個人も破産申立てをする必要があります。

 このような場合は,法人の破産申立てと代表者個人の破産申立てを同時に行います。小規模な法人は,代表者個人と事実上経済的に一体となっていることが多く,そもそも破産管財人は法人と代表者個人を一律に調査する必要性があると言えますが,同じ破産管財人が選任されることにより,裁判所に納める予納金の金額を抑えられるという効果もあります。

具体的には,法人に財産が全くなく,代表者個人の財産も99万円を超えないような場合,京都地方裁判所では,2件合計で引継予納金を21万円(代表者個人の引継予納金20万5000円,法人の引継予納金5000円)とする取扱いがなされています。

2025.04.27

(余談ですが)預貯金口座の入出金明細の印刷について

 京都地方裁判所では,自己破産申立てをする際に,「申立前2週間以内に記帳した通帳の表紙,表紙裏,申立前1年分の写し(コピー)」の提出を申立人に求めています。

 財産目録に添付して裁判所に提出するのですが,数年までは,単純に,依頼者の方に紙の通帳を持参していただき,過去1年前から現在までの部分をコピーするだけで済みました。

 しかし,最近では,保有する預貯金口座の明細が紙の通帳だけである依頼者の方はむしろ少数派となり,インターネットバンキングの普及により,通帳レス口座を少なくとも1つ以上保有されている依頼者の方が多数派となってきました。

 通帳レス口座の場合,銀行によっては,通帳アプリで入出金明細データをPDF形式でダウンロードできるように工夫されています。その場合は,自己破産申立て前に,依頼者の方に入出金明細データを電子メールに添付していただく方法等により,簡単に入出金明細の印刷にこぎつけることができます。

 しかし,口座の入出金明細データをPDF形式等でダウンロードできない銀行もあり,その場合は,やむなく入出金明細の画面のスクリーンショットをつなぎ合わせて印刷し,裁判所に提出します。なかなか時間のかかる作業であり,依頼者の方に事務所に来ていただいても,全ての銀行口座の入出金明細を印刷するだけで1時間近くかかることもあります。

 最近の弁護士にとっての「あるある話」ではないかと思いますが,全ての銀行のインターネットバンキングで,口座の入出金明細データをPDF形式等でダウンロードできるようになってほしいものです。

2025.04.13

自己破産をするとiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)はどうなるのか

  最近,自己破産の相談を受ける際,iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の積立てをされている方から,自己破産申立てをしてもiDeCoの積立てを続けられかどうか等の質問を受けることがあります。

 自己破産申立てをする場合,iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は自由財産として認められるでしょうか。

 答えは「認められる。」です。法的根拠は以下の通りです。

破産法第34条第3項第2号において,差し押さえることができない財産は原則として破産財産に含めないものとされています。そして,確定拠出年金法第32条において,個人型確定拠出年金であるidecoは差し押さえることができないと規定されています。

自己破産申立て手続きにおいて,iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は,国民年金や厚生年金保険などと同様に扱われていると言えます。

2025.01.13

携帯端末代金を分割払いにしている場合に,自己破産をしても携帯電話を使い続けられるのか

「携帯電話料金を滞りなく支払っているが,携帯端末代金を分割払いにしており,さらに,滞納はないけれどもその代金債務が残っている場合,自己破産をしても携帯電話を使い続けられるのか」という相談を受けることがよくあります。

 この点についてインターネットで検索してみますと,その回答については,極論も多く,中には,結論として,自己破産申立てをせずに任意整理をすることを勧めるサイトも見受けられます。

 ここでは実務がどのように動いているのかについて,一般論として述べることはしません。ただ,携帯電話は,今日,日常生活を送る上で不可欠な存在となっていますから,その事実も踏まえて,実務は動いていると言えます。

インターネットで調べたことを過信して自己破産申立てをあきらめるようなことはせず,私を含めた専門家にご相談されることをお勧めします。

2025.01.05

ローンが残っている不動産を所有している場合,自己破産手続は少額管財事件となるのか

 自己破産手続が少額管財事件となりますと,同時廃止事件では不要な予納金20万円を支払わなくてはならず,申立人にとって大きな負担となってしまいます。

 では,ローンが残っている不動産を所有している場合,自己破産手続は少額管財事件となるのでしょうか。

 この点,京都地方裁判所では,ローンが残っている不動産を所有している場合でも,不動産に設定された抵当権の被担保債権の残債務額が,不動産の固定資産税評価額の2倍を超える場合は,査定書なしで同時廃止事件として申し立てることができます。上記の場合は他の債権者に配当が見込めない,ということが主な理由でしょう。

 被担保債権残額が,固定資産税評価額の1.5倍を超え2倍までの場合でも,査定書を添付して同時廃止事件として申し立てることができますが,この場合は,査定書の内容(査定金額)次第で,裁判所が少額管財事件に移行させる可能性が出てきます。

 

2024.12.15

貸与奨学金と破産

「破産したら,親が連帯保証人となっている奨学金はどうなるのか。親が一括で返済しなければならないのか。」という相談を受けることがよくあります。

 日本学生支援機構の貸与奨学金の場合,「2024年度返還のてびき(202410月~20259月に貸与が終了する方用)」を読みますと,「連帯保証人は,奨学金の返還について本人と同等の責任を負い,本人が返還しないときは,その全額について返還しなければならない」旨の記載がありますが,一括で返済しなければならないとの記載はありません。

 人的保証付きの日本学生支援機構の貸与奨学金の返済を遅滞なく続けていた方から,私が自己破産申立て手続きを受任することもよくあります。その場合,受任通知発送後,日本学生支援機構から,返済口座名義人を連帯保証人に変更するよう求める書面と,変更手続きのための書類が私の元に届きます。

 一概には言えませんが,日本学生支援機構の貸与奨学金の場合,私が受任した上記のようなケースでは,連帯保証人が奨学生本人と同じ金額での分割払いの返済を引き継ぐという運用がなされているようです。

2024.11.17

配偶者に自己破産申立てをすることを知られたくない

 自己破産申立てを検討されている方から「配偶者に自己破産申立てをすることを知られたくない」と相談を受けることもよくあります。

 配偶者の理解,協力を得ながら借金問題を解決することは理想といえます。しかし,現実問題として,「借金問題を配偶者に知られたら夫婦関係がうまくいかなくなるので,できれば配偶者に知られずに自己破産したい」等と考えるのは自然なことだと思います。

 自己破産申立書に添付する必要書類の1つとして,「家計収支表」があります。申立人に配偶者が存在し,家計が同一の場合(これが通常でしょう),収入欄には申立人の収入だけでなく配偶者の収入も記載し,支出欄には申立人だけでなく配偶者も含めた食費や携帯電話料金等を記載する必要があります。

 したがって,配偶者に知られずに自己破産申立て手続きを進めたい場合は,「自己破産申立てをすることを配偶者に告げることなく家計収支表を作成できるか否か」を考える必要があります。

2024.11.04

勤務先に自己破産申立てすることを知られたくない

 自己破産申立てを検討されている方から「勤務している会社には自己破産申立てをすることを知られたくない」と相談を受けることがよくあります。

 勤続5年以上の会社員の方が京都地方裁判所に同時廃止の自己破産申立てをする場合,当面退職する見込みがない場合でも,退職金(見込)額証明書があれば,その証明書を提出する必要があります。

 しかし,現実的に見て,勤務先に証明書の発行を依頼した場合,その用途を勤務先から聞かれることが通常でしょうから,自己破産申立てをすることが会社に知られる可能性が高まると言えます。 

 そこで,自己破産申立てをすることを勤務先に知られたくない人が存在することも想定した上でと思われますが,京都地方裁判所では,「退職金(見込)額証明書の収集が困難な場合」に「退職金支給規程及び計算書」を代わりに提出することができます。

「退職金支給規程及び計算書」を提出する場合,勤務先に自己破産申立てをすることを知られる可能性はかなり低くなると思われます。

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